コラム

映画「アルキメデスの大戦」に見る理論と理念の息詰まる攻防戦 ネタバレあり

投稿日:2019年8月5日 更新日:

映画アルキメデスの大戦が公開されましたね。

第二次大戦中の話は暗いものが多いのであまり好きではないのですがキャストやストーリーの面白さにひかれて鑑賞してきました。

VFXの迫力の映像と、菅田将暉、柄本佑ら俳優陣の緊張感のある芝居は圧巻でしたね。

大和の映像はほぼCGですが、メイキングの様子を見るとよく皆さんあの状況で芝居できるなと感心します。
あのセットで芝居しろと言われてもわたしには全然イメージがわかないです。役者じゃないので当たり前ですが。

わたしはこの映画を見て感じたのは、アルキメデスの大戦は櫂直と平山造船中将の理論と理念のバトルだということです。

極論を言えば、舘ひろしも國村隼も、橋爪功も小林克也もこの二人を引き立たせる添え物ではないかと思えたほどです。

そしてこの理論と理念は私たちのスピーチにも必要な要素であり考え方なのでその観点からアルキメデスの大戦を見ていきたいと思います。

これからその点を触れていきますが1回しか見てないので細かな点は違うかもしれませんがご容赦を。

*以下かなりのネタバレがありますので見ていない方は閲覧をお控えください。

 

 

 

この映画の見どころの一つは造船会議とでも言ったらいいんでしょうか、その会議でのお互い一歩も引かないやり取りにあると思います。

大艦巨砲主義者の嶋田少将、平山中将と航空主兵論者の山本五十六少将と永野中将の意見が真っ向から対立します。

嶋田少将、山本少将それぞれが戦艦と空母の建造見積もりを出しますが、排水量や規模ともに大幅に空母を上回る戦艦建造の費用がなぜか空母よりも安い。

そこに疑念を持った山本少将と永野中将ですがその疑念を解決すべく一人の男に白羽の矢を立てます。

それが本作の主人公櫂直です。

櫂直は山本少将側の人間として、巨大戦艦建造がいかに国家予算の無駄遣いかを論ずるために起用されることになり、情報が極端に少ない中数学を駆使して戦艦建造費を独自に見積もることになります。

そして最後の決定会議で櫂直は見事正確な巨大戦艦建造費用を算出し、この計画がいかに不正直かつ無駄な計画かを的確な論理で指摘します。

これで巨大戦艦建造はストップかと思った瞬間、それまで泰然自若として事の推移を見ていた平山造船中将がゆっくりと話し始めます。

あえて安い見積もりで戦艦の見積もりを作ったのは諸外国に巨大戦艦建造を気取られないためあえて味方をもだますような作戦で見積もったことであると。

なんという深謀遠慮という雰囲気となり再び戦艦建造へと流れが傾きかけた時、櫂直が起死回生の一手を打ちます。

それが、巨大戦艦の致命的な構造ミス。

造船初心者ともいえる櫂直にその点を指摘された平山造船中将は驚愕しますが、意外にもあっさりと自分の非を認め戦艦建造計画を白紙に戻すことを進言します。

結局この会議では、巨大戦艦建造には至りませんでした。

しかし後日櫂直は平山造船中将に呼び出され彼の研究所(?)へ。

そこで20分の1のスケールの戦艦模型を見せられます。

そこには平山中将が造りたいと願い、櫂直が独自で図面に起こすことに成功した戦艦の姿があります。

恐らく櫂直自信もイメージしその美しさに思いを馳せた戦艦だったのでしょう。

平山造船中将からこの戦艦の美しさに魅了されたであろうとの指摘に櫂直は上手く言葉を返すことができません。

しかし必死にこの戦艦を作ってはいけないことを櫂は主張します。

そこで平山造船中将はこの戦艦を作る目的を語り始めます。

それは「戦争終結のため」であると。

国家のシンボルともなり得る巨大戦艦が沈められたとなっては戦争に沸く民衆も負けを認めざるを得なくなる。

そのための戦艦であり、これを犠牲とすることで戦争を終わらせたいという理念に櫂直の心は揺れます

そしてそのシンボルとなる戦艦の名前は「大和」であると。

その理念に圧倒された櫂直は大きく苦悩し揺れますが、その後大和の進水式の様子に場面が変わったところを見ると大和の構造上の欠点を修正するのに必要な数式を平山造船中将に教えることになったのでしょう。

櫂直はなぜ平山中将の理念に圧倒されたのか?

わたしはこの映画を見終わった後、櫂は理論では平山中将に見事勝利しましたが平山中将の理念には負けたと感じました。

もちろん櫂直に理念がなかったわけではありません。

そして彼の理論は完璧でした。

しかし平山中将の理念がそれを上回っていたのだと思います。

平山中将の話は普通に考えれば無茶な論理です。大和を犠牲にするということにはそれに伴うたくさんの将兵が犠牲になることを意味します。

諸外国をだますためとはいえ不正とも受け取られかねないような手段を使って大和の建造費を安く見積もらせたことも無茶と言えば無茶です。

しかも櫂直達の調査を阻むために様々な策を講じて前半は見事な悪役っぷりをいかんなく発揮しています。

しかし、戦争不可避で負けることが目に見えている状況の中でどうすれば犠牲をできるだけ抑えて納得のいく負け方ができるかを考えた結果が大和であり、造船中将という立場の中でできる最大限の終戦努力だと考えたのではないでしょうか。

その中で犠牲となる命を背負う覚悟をもって建造に取り組む気迫がみなぎっていたように感じました。

実のところ戦争終結を一番願っていたのは平山中将ではなかったかと思えてなりません。

その理念が櫂直を圧倒したのではないかと思います。

ではここから私たちのスピーチに話を移しましょう。

平山造船中将の理念が正しかったかどうかは議論の分かれるところです。

しかし、わたしたちが何かを人に話す時、そこにしっかりとした理念があるでしょうか。

わたしもつい忘れてしまいがちな点ですが、理路整然としていればそれでよしとするのは、心に訴えかける話かどうかという観点で見るとどうしても片手落ちになってしまいます。

もちろん一つ一つの話に命かけるくらいの気概を持つのは大変ですしそこまで大げさにする必要のない話もあります。

しかし、人になにか行動を促す話をするのであれば、自分自身がそれを行っているか少なくともそれに向かって努力していることは不可欠でしょうし、その行動が及ぼすであろう影響を考えが及ぶ限り考えつくして話すべきでしょう。

こうした圧倒的とも言える軸のある話しは聞く人に多大なインパクトを残しその人が思ってもいなかったような行動へと動かすことがあります。

そうした言葉のバックグラウンドが広く深いほど影響を与える話になりますし、心を動かす話になっていきます。

さらに、櫂直のような圧倒的な論理性にも見習うべき点があります。

彼は自らの論理の根拠を数学に求めました。

まごうことなき数式に依拠することで彼の論議は多大なる説得力を生みました。それが一時的にではありますが大和建造計画をストップさせる力を持ったことからわかります。

このようにしっかりとした根拠に基づく論理は話の説得力を大幅に向上させ場の状況を一変させる力も持ちます。

だからといって特別な能力や調査力がないとダメなわけではありません。

自分が話すことの根拠をはっきりさせておくだけでも力があります。話を準備できる時間にもよりますが、必ず一つできれば2~3個の根拠をもって話ができると話の説得力を生むことができます。

さらにこれを行うことでプラスして自分の自信にもなりますから、堂々と話すことができ緊張感の緩和にも役立ちます。

是非しっかりとした理論と軸となる理念をもってスピーチを準備しましょう。

さらに、しっかりとした理論と理念を持っていると別の力を得ることもできます。

物事を多角的な視点で見ているか?

わたしたちが話す時、いかに多面的に物事を話すでしょうか?

櫂は当初、戦艦造船計画の不正という観点で物事を見ておりそれがいかに間違っているかを証明することに心血を注いで奔走しました。

その努力は一時的には功を奏しました。

しかし、平山造船中将から大和建造計画の「真相」という新たな側面を見せられた時、櫂はこの計画を新たな観点で見ることになりました。

結果としてそれは自身が必死になって止めようとした計画を推進する行動へと導かれたのです。

つまり平山中将は自分の理念と櫂直の理念の違いを把握し櫂に対して新たな理念に基づく観点を提起したことになります。

こう考えると、わたしたちは物事を様々な側面から見ているか自問させられますし、自分が話そうとしている論題を可能な限り多角的に見ているかを問う必要性を感じさせられます。

そうした多角的な観点の提示が、もしかすると私たちの話す論題に否定的だった人を肯定的な立場に変える力になるかもしれません。

平山造船中将の行動は肯定できるものではないかもしれませんが、これをスピーチで生かそうとするときに、

圧倒的とも言えるほど軸となる理念があるか?

多面的な観点を提示しているか?

これが完全になかったとしても少なくともそれを意識した話しを準備しているかを問われていると感じます。

そんな点を学び考えさせられる映画だと感じました。

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キヨシ

スピーチコンサルタントのキヨシです。
スピーチ歴40年
これまで1500人規模の人の前で話すこと多数。
スピーチのコツやテクニックを体得。
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・話し下手を解消したい。
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